けいどろの全ては1話に通じる

けいどろの全ては1話に通じる。

これは今世紀最高にして至高の神ラブコメ漫画「錦田警部はどろぼうがお好き」を語る上で(私の脳内で)必ずと言っていいほど用いられる格言である。それほどまでに情報量が多いというか、この1話でチラッと出たことが後々生かされているのがもう最高~~~!!!という意味だ。これまで何度も読み返したはずなのに読み返す度に新たな発見があって、まさか先生は1話の時点で先の展開を考えておられたのでは……?!と深読みせずにはいられなくなる。たぶん先生はそこまで考えてお描きになられてないと思ってはいますが……いやでももしかしたら考えておられるのかもしれないしそうじゃないのかもしれない……(迷宮入り探偵)。

とにもかくにも、1話とその後の話との繋がりを考えながらけいどろを読むのがとても楽しい。
例えば怪盗ジャックの筆跡に注目したならば、3話でアンリ君が警部のギプスに書いた“を”の文字がぷっくりしているところ、8話で警部がジャックの文字のはらいから機嫌を読み取っていたところが、警部が依頼主に予告状の解説をしている1話2ページ目と重なる。特に8話は2巻の1話目だということもあり、そうした繋がりを感じられるのは先生の計算の内なのかも、と思えるのが最高だ。

他にも後々の話と関連性を感じることの出来るコマはたくさんあるが、その前にここで一度、警部がその恐るべき“長年のカン”によってズバリ言い当てていた怪盗ジャックのプロフィールを並べておこう。

・ジャックはいつもその日の気分によって侵入経路を決める
・特に晴れた日はハンググライダーで空から侵入する
・そんな日は星空でも眺めながらのんびり飛んでくるという意外とロマンチックなところがある
・無類のネコ好き(かわいいものに目がない)
・好きな色は赤、特にカーマインレッド
・乙女座のA型
・好きなお茶はアプリコットティー
・夜寝る時はひざをかかえて寝るタイプ

…………情報が多い!!!
前半3つに関しては観察力がすごいのだな~で済ませることが出来るが、残りに関しては勘という範疇を超えている。好きなお茶はアプリコットティーなのがかわいい。というか、夜寝る時どんな姿勢なのかという答えを持っているということは、警部はこれまでに、あいつはどんな風に夜寝てるのかな……と想像したことがあるということなのだろうか。あるんだろうな……きっと……。

好きなものや血液型を勘で言い当てられるというのは相当の恐怖だと思うが、それでもその後も警部の右腕であり続けるアンリ君。怪盗稼業(しごと)熱心というか我慢強いというか……。というか(だからなんで当たってるんだよ。)のコマのアンリ君が、顔にタテ線を入れて青ざめているのではなく、鼻を赤くしているのがとても気になる。どう見ても斜線だしトーンが貼られてるしこれは……自分のことをズバズバ言い当てられて恥ずかしくなっているのか……?自覚してる以上に警部のことが嫌いではない、いやむしろ好きだったりするのかい……?ねぇ……教えてよ……。

話がずれた。
さて、以上の情報をご覧になって、お気付きになられた方も多いのではないだろうか。そう!!!上に挙げたもののうち、“無類のネコ好き”は第11話「誘惑にゃんにゃん」、“好きな色は赤、特にカーマインレッド”は第14話「警部は見た」にて再度掘り下げられているのである。特に14話はゲッサン掲載時、編集者もオッ!と思ったのか、最終ページに「カラーで見れなくて残念! カーマイン…ですね。」という煽りが載っていた。何を言ってるんですか???(わかる……)

エーーーッ!?!?さ、最高……。こんな最高な漫画があるなんて……何て言うタイトルなんですか……?「錦田警部はどろぼうがお好き」……?わぁ……タイトルまで最高なんですね……かんばまゆこ先生……素敵な作品をありがとうございます……。

警部が大量にジャック関連の資料をスクラップしていることが判明するページにてアンリ君が目にしていた、「おいかける あいつの背中 まぶしくて 32さい オニけいじさん」も、後々の展開を考えると見逃せない重要な一シーンだ。
警部の32歳という年齢は、第12話「誰が為に鐘は鳴る」のテレビニュースにてキャスターに読み上げられて再び表記されている。かんば先生は自分のキャラクターの設定資料を作ってらっしゃるんじゃないだろうか……という想像が、このような繋がりから出来るような気がする。それにしても32歳とは……なんという絶妙な年齢だろう……。錦田健吾という名前も最高だ。錦田健吾32歳……思わず口ずさみたくなる素敵な響きである。
自分で自分のことをオニ刑事って言ってるのがかわいい。死んだ目時代に周囲から言われていたのだろうか。
「おいかける あいつの背中 まぶしくて」……何度読んでも素晴らしい俳句だ。「錦田警部はどろぼうがお好き」という作品を端的に、しかし的確に言い表している。
追いかけても追いかけても逃げていってしまう、あいつの―――怪盗ジャックの背中が、警部には眩しくて仕方がない。逃がしてしまってばかりだけど、いつ死んでもいいと思っていた自分に生きる目標を与えてくれたから、何度も挫けずに今日も警部はジャックを追うのだ。愛しい光に手が届く、その日まで。
ウッ、ウオオン……警部の一途さが伝わってきて泣けてしまう……絶対幸せになってくれよな……。

と、このように、1話でさりげな~く明かされていたことが後々生かされてくるのも「錦田警部はどろぼうがお好き」の大きな魅力の一つである。何度読んでも新しい読み方に気付けるのが楽しくてたまらない。もしかしてここはこういうことなのでは?と思っていた部分が、次読んだ時には全く違った意味を持ってこちらに迫ってくるこの作品が私は大好きだ。きっとこれからも、あーだこーだと考えながら読み返しては答えのない問いにウンウン頭を捻らせることだろう。それがどうしようもなく幸せで、嬉しい。だから私はこの先も、「錦田警部はどろぼうがお好き」の連載再開を夢見ながら、かんば先生の無病息災・家内安全・厄難退散・商売繁盛を祈って生きていくつもりだ。心の底からこう思う。「錦田警部はどろぼうがお好き」に出会えてよかった!!!と。



(ここから先は1話の萌え語りです)
「次はいつ会えるー!?」と叫ぶ警部がかわいい。後ろで「警部!」と突っ込む部下たちも良い味を出していて好きだ。
本当にジャックがやって来るのか不審がる「黄金の女神像」の所有者に、楽しそ~にジャックの筆跡の特徴について語る警部が愛しい。楽しそうで何よりだ……。
初登場時のアンリ君が、背景のシャンデリアがキラキラしてるのも相まって、はい!!!美青年です!!!感が強くなっているのがとても好きだ。今よりも身長が十センチくらい高そう……。次ページの「それは本当ですか!?」のコマにて、耳打ちするためというのもあるが、警部がアンリ君に合わせて若干腰を屈めているのが良い。
「射撃は得意です。」とアンリ君は言っていたが、実際に拳銃を使っているシーンが10話の超至近距離&空砲で警部を撃つところしかないので、それが事実なのかが気になる。トランプを投げて照明を割ってたくらいだし本当に得意なのだとは思いますが……どうなんでしょう……。
ジャックの仲間は射殺しても構わないと言う警部。ヤベ~~~男であることがこのコマだけでわかり、最高である。
警部が「ハチの巣だ!」と言った直後のコマのアンリ君をご覧になりましたか?とてもかわいいですよね……かわいい……。1話は全体的に有能でクールな美青年として描かれているアンリ君が、このコマでは突然ベリベリキュートなお顔になっているのがたまらなく好きだ。隠しきれない可愛さ、ということなんでしょうね……(どういうことだよ)。
「好きな料理はなんなのか…」「最近観た映画は…」という警部が知りたがっていたジャック情報は、後のお家デートとフガフガの後にあったであろう映画館デートの布石であるような気がしてならない。映画館デート……して欲しいな……。
資料用と保存用とで二冊ずつあるとはいえ尋常でないスクラップの量を見ると、果たして何年前から怪盗ジャックは怪盗行為をしてきたのかが気になる。先述した投稿俳句のような、ジャックが起こした事件には直接関係のない記事も多く含まれてはいそうだが……謎だ……。
「警部~~~」と呼び掛ける警官に「シッ!」としてるところのアンリ君。一人称が“ぼく”なのが良い……。まだ一人称が定まっていなかったからか、それともアンリ君が警部について何も知らなかったことから察するに配属されて間もなかったために“ぼく”にしといて、その後気が緩んできたから“オレ”にしたというところだろうか。どちらであっても大変良いと思います。
警部のお金でアイス買ってもいい、とアンリ君が言っていたから素直にアイスをご馳走になる部下たち。緊張感の欠片もなくて大好きだ。良い職場なんだろうな……。
怪盗ジャックの登場シーンの描きこみがすごい!!!!!!これは警部が骨抜きにされるのも仕方ない、誰だって惚れちゃうよ、うんうん……と否応なく納得させられる格好よさ美しさが半端ではない。腰のくびれ!!!服の皺!!!指先!!!艶のある黒髪!!!揺れるマント!!!自信に満ちたこの口角の上がり方!!!輝く大きな瞳!!!「ごきげんよう諸君」!!!好きにならない要素が一つもない……。「……?」となってるコマのジャックもメチャメチャ好きだ。クールでありながらキュート……完璧だ……。
次ページのもじもじする警部とそれを応援する部下たちの図も大好きだ。「あー泣かした~」「ジャックひどーい。サイテー。」何度見ても笑える。
ジャックが逃げようとするのを止めようとするも振り返られると身を隠してしまうあの一連の流れも大変良い。それにイライラして舌打ちするジャックも好き。
この時はじぃー…と見つめられるとキャッとなってしまうほど初心だった警部が、後にジャックとお家デート出来るほどにまで成長というか耐性をつけたことに感動を覚える。これから先も追いつ追われつしながらお幸せにー!!!